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大阪地方裁判所 昭和59年(ワ)8697号 判決 1985年3月05日

原告

竹内俊之

被告

財団法人田附興風会

右代表者理事長

近藤鋭矢

右訴訟代理人弁護士

米田泰邦

主文

一  本件訴のうち、「原・被告間において、訴外恵風会高岡病院が原告を精神病であると診断したことが無効であることを確認する」との訴部分を却下する。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  原・被告間において、訴外恵風会高岡病院(以下「高岡病院」という)が原告を精神病であると診断したことが無効であることを確認する。

2  被告は原告に対し、原告を訴外学校法人大鉄学園(以下「大鉄学園」という)に復職させよ。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  仮執行の宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

(本案前の答弁)

本件訴をいずれも却下する。

(本案に対する答弁)

原告の請求をいずれも棄却する。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は昭和四二年四月二二日に被告病院で診察を受けた。

2  その後、原告は、高岡病院で精神病との診断を受けた。

3  そのために、原告は大鉄学園を退職した。

4  よって、原告は、被告との間で、高岡病院が原告を精神病であると診断したことの無効確認と、被告に対し、原告を大鉄学園に復職させることを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1のうち、原告が被告病院で診察を受けたことは認めるが、診察の日付は否認する。

原告が被告病院で診察を受けた日付は、昭和四二年二月二二日である。

2  同2・3の事実は知らない。

理由

一  確認の訴の対象は、特定の具体的な権利又は法律関係であることを要し、法律で特に許されている場合を除き事実の確認を求める訴は許されない。

ところで、請求の趣旨第一項は、高岡病院が原告を精神病と診断したという事実の無効確認を求めるものであるから、右訴部分は不適法であり、却下を免れない。

二  請求の趣旨第二項は、原告が被告に対し、原告を大鉄学園に復職させるという具体的な給付(作為)を求めるものであるから、請求原因の記載と相俟って一応請求の特定はなされているものと解すべきであるが、原告が請求原因で主張する事実が仮に全て認められるとしても、右事実によって被告が大鉄学園に原告を復職させる義務を負うことはない。

なお、原告が訴状、準備書面、釈明準備命令と題する書面において主張した事実についても、仮にそれが全て認められたとしても、被告が大鉄学園に原告を復職させる義務を負うものではない。

三  よって、原告の訴のうち、請求の趣旨第一項記載の訴部分については、不適法な訴であるからこれを却下し、請求の趣旨第二項記載の請求については失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 田中清)

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